秋谷奈美

コーディネーター:秋谷奈美

東京で20年の社会経験を積み、ある時から都会生活に違和感を覚える。

自分の本質を失いかけていた時に「農業」に辿り着く。「農業は人を癒す」という事を自ら体感。

一昨年までは下市町の地域おこし協力隊として活動し、現在は奈良女子大学の教務補佐として地域に根差した教育にも従事している。

2017年より下市町広橋にてゲストハウスAPRICOTを営む。

取得資格

  • 保育士
  • 小学校英語指導士(J-SHINE)
  • 食生活アドバイザー2級
  • 環境セラピー ジュニアセラピスト
  • タイマッサージ師(チェンマイにて取得)
  • 全米ヨガアライアンス ヨガインストラクター
  • 農業検定3級

 

プロフィール

里山の暮らしには、多くの学びがあります。
美しい四季を通じた自然から頂く恵みと厳しさ、山にある豊富な資源、植物や生き物から得る共存の仕方、地域の人から得る先人の知恵、ココロの通じた人との交流。
本来人間は、自然の中で生きるいきものです。
里山には生き方のヒントが沢山あります。畑作業や山仕事をして疲れていても、何かしら里山にある資源や人が、癒しを与えてくれます。
しかし都会では、人々は便利で新しい物を追いかけ、その結果ココロがついていけずバランスを崩していく人がたくさんいます。
今の人は贅沢に慣れてしまい「足るを知る」を忘れているようです。
人間の本質を理解できていない人が多く存在し、技術は発達しているがココロが衰えて偏っている。それが今の日本の社会の姿のように私には見えます。

生い立ち

私の生まれは、埼玉県の浦和(現さいたま市)、官公庁とビルやマンションに囲まれた環境にあり、土にも虫にもほぼ触れたことなく育ちました。東京はすぐ隣、学生時代も遊ぶところも仕事も、拠点は東京でした。全てが手に入り、若者にしたら充分過ぎる環境でした。
しかし25歳を過ぎると何か物足りなさを感じ、このまま物質的に満ち足りた環境にいて良いものか、そして日本の堅苦しいしきたりや、マスコミに踊らされ皆が同じ方向に向かう個性のない機械的な意識に苛立ちを感じ、世界を見たくてイギリスへの留学を決意しました。

渡英

留学当初は、語学学校に通いながら、暫くホームステイでイギリス人の生活を見る事にしました。
受入れ家庭はホストファミリービジネスを生活の糧にしているため、あまり裕福ではない家庭が殆どでした。
トイレは1日に1度しか流さない、洗濯機は1週間に1回、電気はあまりつけない、様々な家庭で3軒ほどお世話になりました。
その後も大学の寮で中国人女子4人と生活しましたが、他人と生活するのが嫌になったので1人で家を借りる事もしました。しかし直ぐに大家さんがスペイン人とパレスチナ人を受け入れたので仕方なくシェア生活をし、掃除の仕方で揉めてみたり、次はイギリス人男子4人が入り込んで生活を始めたりと、常に他人と共同生活をしていました。
ようやく最後は、独立したミニキッチンとキングサイズのベッドが用意された大きな家の屋根裏部屋をお借りする事ができ、親切なお宅で半年お世話になりました。
こうして転々と渡り歩いて分かったことは、イギリス人や他国の人は地味で質素な生活を送っており、自らDIYやお庭の手入れをし、電気も暗めにトーンを落として節約、水を大切に使い、お金をかけずに楽しみや幸せを見つけて生活する姿を見る事が出来ました。日本はやたらと電気が明るいですね。さすがガーデニングの国なので、小さなお庭でもお花を綺麗に育てており、よくリスが実を食べにくる事も見られました。

恐らく世界でも日本くらいでしょうか、潔癖でカッコウばかり気にしているのは。
私は郷に入れば郷に従えで、いつもオシャレを気取った日本人で居る事を忘れました。お風呂は2日に1回、髪の毛を洗うのも2~3日に1回、服は3日間同じ服。日本のデパート広告で見かける外国人モデルのオシャレなお姉さんなんぞ、一人もいません。
自分のOL時代からは考えられない生活をしていましたが、これだけでも節約ができ環境汚染も減ります。イギリスは水と資源を大切にする国で、国立公園の美しさには感動したのを覚えています。ここで羊とメーメーお話しながら散歩をするのが私の一番の癒しでした。

語学の勉強の他に、交流関係と経験値を高めるために仕事もしました。デパートでお寿司の販売や、保育士資格を活かして、週に1度、日本人向けの幼稚園の先生もしていました。休みの日はイギリス人や他国の人と、頻繁にハイキングへ行き、山登りへ行き、ランチやパブ、クラブへ行ったりと、イギリス生活を満喫。広大な自然でハイキングなどしたこともなかったので、ただただ自然を鑑賞しながら5時間以上も歩く事で、自然界の音や動物の鳴き声、香り、植物の味、まさに五感をじっくり働かせるとはこういう事かと、1時間やそこらで歩くのとは全く違う事がわかりました。
お国の事情が一番分かるのが宗教で、それぞれが自分の宗教観を語り、他国での常識非常識を他人事ながら聞いておりました。日本では考えられない縛りや規則、また他国に比べたらダントツで日本人は個性がなく自分の意見や歴史を語れない国である事を思い知らされました。
世界中の人が集まる英語圏に行った事で、多種多様な考え方と文化の違い、戦時中の人とも交流し、常識とは何を常識というのか、自由とは何か、心の豊かさとは何か、幸せとは何か、異文化交流を通して視野が大きく広がりました。ここでの短い1年半の生活は、この先の人生に大きな影響を与えました。

帰国

日本に戻ってから、日本人の生き方や暮らしぶりにさらに疑問を感じるようになり、自分らしく生きるための天職を探し求め、数多くの職に就きました。それは履歴書の右側半分を超えます。実家の経理、子供英会話講師、英会話スクールの営業、国際交流の事務局、行政機関の事務、外資系の総務、丸の内OL、研究者の海外秘書、etc、タイ古式マッサージの資格をチェンマイで取得、ヨガインストラクターを取得、とにかく自力で生きる方向性を求めて右往左往しておりました。
その間、母が病気になり、伯母が病で他界し、友人が鬱になり、希望がどんどん消え、私も家族や人間関係でストレスを抱えていたので、鬱になりかけました。
自分自身もつらい経験をしていましたが、この時にとても大きな気づきがありました。それは、私がマッサージ師時代に数多くの施術をしていた頃の事です。施術をしながらいつもお客様の悩みを聞いていましたが、その悩みが解決すると、その方が施術に来なくなる事に気が付いたのです。
心の悩みや問題は身体に表れるということが分かり、「心身共に繋がっている」という事を確信しました。
またこの頃、同じマッサージ師の同僚が時々農業のお手伝いをしている事を知りました。
当時は、「食」についても模索していましたので、「農業」という言葉には何かピンとくるものを感じました。
私は子供の頃からアレルギー体質で、少しでも古いものを食べたり、おかしな添加物が入っていたりすると、身体が反応して湿疹がでたり気分が悪くなったりします。食については人よりも敏感でした。
一時期流行したサプリメント生活もしたことがあり、色んなものを試していたら身体が膨張し体調を崩し、病院に通ったこともありました。
その時お医者さんに言われたのが「普通の食事をしなさい」というシンプルな回答でした。
では何を食べたら良いのか、添加物だらけでスーパーで売っているものや加工品を信用できなくなり、だったら食べるものくらい自分で作るべきであろう=農業 という結論に達しました。

気づき

それから数年経ち、念願叶って軽井沢で農作業のお手伝いをする機会に恵まれました。
当時は横浜に住み、フルタイムの仕事をしていましたので、週末になると東京・埼玉を縦断し新幹線で軽井沢まで、どんなに遠くても清々しい田舎へ行くことにワクワクしながら通っていました。
農家さんは忙しいので、素人にかまっている時間はありません。そんな中でも農家さんが私を受入れて下さる事、農作業をさせてもらえる事を有難く感じました。
そして、この農家さんでの経験が、後の私に大きな転機をもたらしたのです。
まだ寒さが残る凛とした空気の浅間山の麓で土に触れた時でした。土の気持ち良さを体感し、同時に大地からミナギルパワーを体中・細胞にまで行き渡るのを感じたのです!その瞬間、「そうか、農業セラピーをしよう!」と大きな希望と感動を抱く事が出来ました。私はあの時の感覚を忘れてはならないと思っています。

そう思ったらあとは行動するだけでした。私は、安定した職を辞して人の多い関東を飛び出し、日本の原点である奈良を拠点に選びました。
なぜ奈良かというと「人は原点に戻るべき」だからです。
そして自分の名前が奈美。「奈良が美しい」からです。ホントです(笑)。

さとやま暮らし

イギリスでの資源を大切にする考え方、他国の自由で豊かなココロの持ち方、田舎の地で五感を通して農作業ができる有難さ、そんな感覚を持って奈良の下市町に来てからは、水を得た魚のように、何かに突き動かされるように、農林塾やゲストハウスを始めとして、人と自然をツナグ活動をしています。

現代のストレス社会においては、心身共にバランスの取れた生活をするのは容易ではありません。しかし土に触れること、自然の環境に身を置くことで、眠っていた人間らしい感覚を取り戻すことはできます。それは田舎にきた人にしか分からない感覚です。五感を通した感覚を持つことで、人はバランスよく生きていけるのだと思います。

自分の手で自分の食べるものを作り、大地とともに生きる田舎での生活をぜひ経験してください。それはきっと、人間として生きる意味を理解する助けとなります。(ちょっと大袈裟ですけど)
またもし、まだ一度も田舎暮らしの経験がなく、いつか田舎に住みたいと思っている人は、直ぐにこちらでの生活を考えられたらどうでしょう。「足腰が利く若い時には田舎暮らし、その経験を携え、歳をとったら便利な都会暮らし」そんな生き方が、真に豊かな人生なのではないかと私は思っています。

 みなさんに、
「人生に一度は、農山村にある里山で身体を通して豊かな生活を送り、自然を敬い感謝のできるココロを身につけて欲しい」と、切に願っています。

よしの農林業週末塾
秋谷奈美